内容紹介
障がい児のためのピアノの教室を主宰する著者のもとには、じっと座っていられない、話が噛み合わない、こだわりが極端に強い、理解力が乏しいなど、その特異な言動で、通常のレッスンが成立しづらい生徒への対応に悩むピアノ指導者から、次々相談が持ち込まれるという。それらに答えるべく、障がいを持つ子どもたち、およびグレーゾーンと呼ばれる子どもたちへのピアノ・療育指導のポイントをまとめたのが本書。障がいに関する基本情報はもちろん、よく見られる30の問題行動と、その対処法については、できる限りページを割いて多くの事例を取り上げている。専門用語は最低限に抑え、わかりやすさを最優先した「障がい児ピアノ指導」の入門書。個々の生徒に合わせた指導法を編み出していく過程を描いた箇所や、各種レッスンアイテムを使った指導例は、定型発達の、特に幼児への指導においても役立つ内容になっている。
●『気になる子へのピアノレッスン』著者メッセージ動画
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目次
第1章 最初は私も混乱と困惑の中にいました―障がいを持つ子どもたちを教え始めたキッカケ
①運命を決めた“ピアノに登った女の子”
②パァーっと拓けていく世界
第2章「アレ?この子もしかして…」
①障がい児を受け入れているわけではないのに……
②Re-アセスメントで問題整理
③まずはその子の特徴を捉える
第3章 体験レッスンでやるべきこと
①観察とヒアリング、そして記録
②「そんなこと、聞いていいの?」
③4つの能力を見極める
④アセスメントシート
⑤始めたら、続けよう!
第4章 親御さんの気持ちに寄り添う
①わが子のために
②心に響く“言葉がけ”
第5章 障がいの知識――基礎の基礎
①障がいを大きく分けると?
②発達障害って何?
③広汎性発達障害
④自閉スペクトラム症
⑤重いか軽いかの程度区分
⑥グレーゾーンとは?
⑦冷静で的確な判断を
第6章 それぞれの障害の特徴と指導ポイント
①自閉症
②アスペルガー症候群
③学習障害
④注意欠如(欠陥)・多動性障害
⑤遺伝子異常による障害・疾患
⑥脳性麻痺、肢体不自由
⑦視覚障害
⑧グレーゾーン
第7章 レッスンの組み立て方
①「見る・聴く」から「5つのステップ」へ
②理解度に合わせた教材選び
③プログラムの大枠を決める
④レッスンの組み立て例
第8章 心に留めておきたいこと
①レッスン室の環境づくり
②絵や写真、音で伝える
③見通しが立つという安心感
④「~しましょう」よりも……
⑤“できたこと”に目を向ける
⑥質問は選択式から
⑦ プレッシャーを軽くする工夫
⑧完璧を求めない
⑨抽象的な概念を理解するために
⑩要注意!レッスンプログラムの急な変更
⑪役に立つ「同質の原理」
⑫オリジナルへの強固なこだわり
⑬複数のことを並行して進めるには?
⑭記憶定着のためのプログラム
⑮レッスンの主導権はだれの手に?
⑯粗大運動と微細運動
⑰数字とアルファベットの活用
⑱気づきにくい障がい
⑲ボディタッチは慎重に
第9章 あると便利!レッスンアイテム
①ウォールポケット
②色丸シール
③ドミノ倒し 積み木
④ミシンボビン
⑤小さめのホワイトボード、色付きマグネット
⑥カード類
⑦らくがき帳
⑧2段の五線ノート
⑨折り紙、A4コピー用紙
⑩ストップウォッチ、キッチンタイマー
⑪柔らかいボール、紙風船
⑫パペット
⑬和音笛
⑭いろいろな打楽器
⑮ピアノ補助台
⑯ビッグシール、フレークシール
⑰10円玉チョコ
⑱アメ
⑲音楽アプリ
第10章 問題行動とその対処法
①挨拶ができない
②場所見知り
③頻繁に同じ行動を繰り返す
④チック症
⑤クレーン行動
⑥オウム返し
⑦同じことを繰り返し言わせる
⑧とにかく待てない
⑨新しい課題への恐怖
⑩“順番通り”にこだわる
⑪繰り返しを拒否する
⑫他人に合わせるのが不得手
⑬同じ道順、決まった時間しか受け入れない
⑭選ぶことが苦手
⑮自分の意思かどうか判断しづらい
⑯一度泣き出したら手がつけられない
⑰じっとしていられない
⑱拍の理解が難しい
⑲ピアノを怖がったり嫌がったりする
⑳姿勢が安定しない
21 想定外に弱い
22 トイレへの執着
23 様々なことへの“こだわり”
24 暴力や暴言
25 グループレッスンで和を乱す
26 声の大きさをコントロールできない
27 答えがなかなか返ってこない
28 身体のどこかが動いてしまう
29 自傷行為
30 教室の物を黙って持ち帰る
第11章 レッスンの先に広がる未来
①初めての発表会
②失敗という概念
③演奏だけにスポットを当てない
④チャレンジ前の大切な準備
⑤“つまずき”も貴重な経験
⑥「できない」を「できた!」に