• 精神科領域における音楽療法ハンドブック

書籍 理論・専門書

精神科領域における音楽療法ハンドブック

久保田牧子

定価
2,640円 (本体2,400円+税)
判型・頁数
A5・120頁
発行年月
2003年5月
ISBNコード
9784276122789
商品コード
122780

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内容紹介

精神科医療での音楽療法は多く行われているが、その全体にわたって書かれたテキストはない。本書は長年精神病院で音楽療法士としての実績を積み重ねてきた著者が、現場の視点を大切にして全体について記述したわかりやすい書籍である。精神科医療ではどんな療法が行われていて、その中で音楽療法はどんな位置を占めているのか、またどんな精神疾患が音楽療法の対象となり、各々どのようにセラピーが行われているのか。音楽療法の形にはどんなものがあり、各々具体的にどのように行われているのかなど、簡単に症例を挙げながら書かれている。

目次

第1章 日本における精神科医療への音楽療法の導入
1.慰安、環境療法としての音楽と、作業に結びついた音楽
2.音楽好きの医師が持ち込んだ音楽活動
3.音楽療法の概念規定を目指して
4.音楽専攻者とのチームによる音楽活動の展開

第2章 精神科医療におけるさまざまな療法
1.精神科医療はチーム医療
 1)チーム医療
 2)医療チームの運営
2.精神科医療における治療法
 1)身体療法
 2)精神療法
   (1)支持療法(supportive therapy)
   (2)説得療法(persuasive therapy)
   (3)暗示療法(suggestive therapy)、および催眠療法(hypnotherapy)
   (4)精神分析療法(psychoanalysis)
   (5)森田療法(Morita therapy)
   (6)行動療法(behavior therapy)
   (7)芸術療法(art therapy)
   (8)遊戯療法(play therapy)
   (9)集団精神療法(group psychotherapy)
      a.心理劇(psychodrama)
      b.精神分析的集団療法(psychoanalistic group psychotherapy)
 3)環境療法(milieu therapy)
   (1)生活療法
      a.生活指導(habit training)
      b.レクリエーション療法(recreational therapy)
      c.作業療法(occupational therapy)
   (2)社会復帰(rehabilitation)と精神科デイケア

第3章 精神科医療における音楽療法の意味
1.環境としての音楽療法
 1)医療施設のなかに和やかさを作る
 2)音楽を介した交流
2.活動としての音楽療法
 1)自己決定
 2)病気からの離脱(気分の転導)
 3)発散と昇華
 4)集団活動の有効性
 5)共感的理解
 6)今ここ(here and now)

第4章 精神科医療における音楽療法の対象
1.総合失調症(schizophrenia)
 1)症状
 2)患者の外見と内心を区別した観点
 3)病型
2.躁うつ病(manic-depressive psychosis)
 1)躁状態とうつ状態
 2)周期性
   a.躁病(mania)
b.うつ病(depression melancholia)
3.神経症(neurosis)
4.青年期やせ症(anorexia nervosa)、神経性食欲欠如症(mental anorexia)
5.境界例(borderline)
6.アルコール精神病(alcoholic psychosis)
7.精神遅滞(mental retardation)
8.自閉(autism)

第5章 治療の場所と音楽療法
1.治療の場所
 1)入院治療の場
   (1)閉鎖病棟(closed ward)
     ●保健室(cell)
   (2)開放病棟(open-door ward)
     ●開放管理性(open-door system)
     ●ホスピタリズム(hospitalism)
 2)外来治療の場
   デイケア(day care)
2.各治療場面での音楽療法
 1)音楽療法の取組みの手順
      a.アセスメント
   b.音楽療法の計画
 2)入院治療における音楽療法
   (1)閉鎖病棟での音楽療法
      a.急性期の音楽療法
   b.慢性期の音楽療法
   c.閉鎖病棟オープングループ音楽療法
   (2)開放病棟での音楽療法
 3)外来治療における音楽療法
   (1)デイケアの音楽療法 
   (2)外来通院の音楽療法     
      a.外来患者のオープングループ音楽療法
b.外来患者のクローズドグループ音楽療法
c.外来患者の期間設定の音楽療法
3.評価と記録
 1)精神科の音楽療法・治療目標別による評価の視点項目
 2)記録

第6章 音楽療法の形態とその特性
1.形態の構造的・機能的側面
2.個人音楽療法
 1)能動的に行われる音楽療法
 2)受動的に行われる音楽療法
3.集団音楽療法
 1)音楽療法への参加まで
   (1)座席 
   (2)第一段階
   (3)第二段階
   (4)第三段階
 2)大きな集団――オープングループ
   (1)特性
   (2)治療目標と音楽療法士の役割
 3)中くらいの集団(10~20名)
   (1)特性
   (2)治療目標と音楽療法士の役割
 4)小集団――クローズドグループ
   (1)特性
   (2)治療目標と音楽療法士の役割

第7章 精神科で行われる音楽療法のいろいろ
1.能動的な方法
 1)歌唱、コーラス
   (1)歌唱活動の治療的な意味
      a.身体への影響
b.歌詞のメッセージ性   
   (2)伴奏の役割
   (3)患者さんの反応
      a.特定の意味をもつ語へのこだわり
b.歌詞の意味の質問
c.メモリーソングとの出会い
d.学生時代の思い出を語る
 2)楽器演奏、合奏
   (1)楽器演奏の治療的な意味
   (2)楽器の特徴
      a.打楽器
b.メロディー楽器
   (3)器楽合奏
   (4)トーンチャイム演奏
      a.音のパターンを表現する
b.ハーモニーを表現する
 3)動作を用いて
   (1)手ぬぐい体操
   (2)当て振り
   (3)レクダンス
2.受動的な方法
 1)レコード、CD鑑賞
   (1)レコード、CD鑑賞の治療的な意味
    a.選曲における患者さんの自発性
b.自分にとってすばらしいと思う音楽との出会い
   (2)感想を書くことの治療的な意味
 2)嗜好拡大法
 3)RMT(調整的音楽療法)
 4)GIM(音楽によるイメージ誘導法)

第8章 音楽療法におけるプログラムと脱プログラム
1.プログラムとは
 1)選曲と配列
   (1)曲の配列の仕方
   (2)選曲の基準
 2)プログラミングと患者さんの反応
   (1)プログラミング s―g法
(2)プログラミング n―g法
   (3)プログラミング n―g―a法
2.脱プログラム
   即興演奏
   (1)リズム合奏
   (2)間奏における即興演奏

第9章 疾患とそれに対応する音楽療法
1.総合失調症の音楽療法
 1)総合失調症と薬物療法
 2)総合失調症の患者の主体性と脆弱性
 3)総合失調症の音楽療法の目的
 4)総合失調症の音楽療法での特徴
   (1)うまくできないという思い込み
   (2)過剰な反応、過剰な表現
   (3)ごくわずかの表現
 5)総合失調症のデイケア集団音楽療法
   (1)症例
      a.自分のペースを守れる場を見出す
b.シンセサイザーを通した表現
c.作詞、作曲を通した表現
d.訳詞を通した表現
   (2)若干統合失調症患者の音楽療法
2.摂食障害の音楽療法
 1)摂食障害の治療と音楽療法
 2)摂食障害の同年代グループでの音楽療法
 3)共感、共有体験
3.うつ病の音楽療法
 1)うつ病の音楽療法の治療性
 2)うつ病の音楽療法の構造と流れ
   (1)プログラムの内容と目的
   (2)シェアリング
 3)うつ病患者の音楽受け入れの特徴
 4)気分の変化への注意
 5)うつ病の音楽療法症例
   症例1.歌詞のなかに自分の心境を見出す
   症例2.リクエスト曲で人生の旅路を辿る
   症例3.歌うことで得た心の浄化と発散