君も星だよ ――合唱曲《COSMOS》に込めたメッセージ

ミマス
1971年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。音楽ユニット『アクアマリン』のキーボード、ギター、作詞・作曲担当。代表曲『COSMOS』『地球星歌』などは富澤裕氏により合唱曲に編曲され、全国の学校や合唱団で歌われている。小学生の頃から天文や宇宙に親しみ、旅好きで多くの国を旅した経験もあるため、星や宇宙、自然や旅などをテーマにした作品が多い。大学・大学院の専攻は自然地理学。音楽は高校生のときに独学で始める。近年はアクアマリンでのライブ活動のほか、小・中学校に招かれての授業や講演も多い。
公式サイトは、http://aqumari.com/

ミマス

ミマスさん初のエッセイが、8月に刊行!タイトルは 『君も星だよ――合唱曲《COSMOS》にこめたメッセージ』。 ここでの連載記事も含む内容です。お楽しみに!

新着記事

第8回(最終回)
ミマスのオススメ本!

1.『人間の土地』サン=テグジュペリ

 読書好きの人の多くが、「人生の教科書」といえるような一冊を持っています。そんな本に若い頃に出会えた人は幸せです。僕にとってはサン=テグジュペリの『人間の土地』こそ、そんな存在です。
 『星の王子さま』の作者として有名なサン=テグジュペリ。彼は実際にパイロットとして大空を飛びまわった経験を持っています。地中海を越えてフランスからアフリカへ。また南米のアンデス山脈やパタゴニアの大地の上を。それらの航路が開拓されたばかりの時代です。飛行機はとても小さく、エンジンはしばしば止まりました。不時着や遭難といったアクシデントが、パイロットたちを襲います。アンデスの雪山で遭難した僚友の壮絶なエピソード。サハラ砂漠を絶望と闘いながら何日もさまよった彼自身の体験談。その中に、きわめて崇高な人間の姿が描かれてゆきます。憧れ、誇り、仕事に対する義務感。そして大切な人たちへの愛。それこそが人間に、最後のもう一歩を踏み出させるのです。
 大空と地球を舞台に、この本で語られるのは人間の天稟、つまり人間とは何かということです。人は何のために生きるのか、幸福とはどう生きることなのかということです。
 この本のなかにある一文は、僕にとって最高の座右の銘です。
 「人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。」
 僕はやはり、そんなふうに生きたいと思います。


2.『夜と霧』『それでも人生にイエスと言う』V. E. フランクル

 フランクルの『夜と霧』は、世界中で広く読まれ、多くの人々に生きる力を与えてきた有名な本です。
 精神科医であったフランクルは、第二次世界大戦中、あの悪名高きアウシュビッツをはじめとする強制収容所の囚人となります。ナチスドイツによって数百万人が虐殺された地獄のような状況下。凍える寒さの中での果てしない強制労働。蔓延する飢餓と伝染病。毎日のように多くの仲間が力尽き亡くなってゆく中で、彼は生き残ります。生き残って、終戦後にこの本を書いたのです。
 フランクルの哲学の大きなテーマは「生きる意味」です。どんなに絶望的でも、これいじょう生きる価値が無いと思われるような状況でも、万人に生きる意味があるのだと説きます。僕にとって衝撃的だったのは、フランクルのこんな言葉。
 「あなたが人生に何を求めるかは重要ではない。人生があなたに何を求めているかが重要なのだ。」
 これはつまり、「まだ成されていない多くの事柄が、あなたによって成されるのを待っている。だからそれをするために、あなたは生きるのだ」ということです。人生の意味は人によって違います。僕にあてはめるなら、さしづめこんなところでしょう。「まだ作られていない多くの歌が、君によって作られるのを待っている。だから君はそれを作るために生きるのだ」。この考え方に触れたとき、僕は本当に感動しました。君にもきっと、そういう「何か」があるのでしょう。フランクルという人は、その生涯をかけて、君や僕に「あなたの人生には大きな意味と価値がある」といい続けてくれた人です。彼の講演の内容を収めた『それでも人生にイエスと言う』と合わせて、ぜひ読んでほしいです。


3.『今日の芸術』岡本太郎

 芸術家の岡本太郎さんといえば、1970年に開催された大阪万博のシンボル「太陽の塔」の作者として有名です。現在も万博公園に異様な存在感でそびえ立っていますね。若い方は岡本太郎の名をあまりご存知ないかもしれませんが、「芸術は爆発だ!」というセリフで一世を風靡した、偉大な芸術家なのですよ。その彼が今から60年以上も昔、1954年に発表したのが世紀の名著『今日の芸術』です。
 これはとにかく衝撃的な本です。常識を蹴散らすような、目を疑うようなことばかり書いてあります。芸術とは「うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」などという言葉に、多くの読者は戸惑うでしょう。芸術とは「ちょうど毎日の食べものと同じように、人間の生命にとって欠くことのできない絶対的な必要物」であり、「だれでも描けるし、描かねばならない」と急に言われても困ってしまいますね。
 ところが、そこからが岡本太郎のスゴイところです。小学生でも理解できるような易しい口調で、六十年前の文章とは思えないような新鮮さで、僕たちすべての人間が、無限の可能性を持った芸術家なのだとストンと納得させてくれます。生きることそのものが芸術であり、芸術の無い人生などあってはならないと訴えるのです。きっと君もこの本を読んで、目からウロコが落ちるような感動を味わうことでしょう。自分も何かやってやろうという気分になり、新しい、素晴らしい人生をスタートさせることになるはずです。


4.『星界の報告』ガリレオ・ガリレイ

 1610年1月。ガリレオ・ガリレイは自作の望遠鏡を夜空に向け、大発見をします。木星のまわりを、4つの小さな星が回っていたのです。それは単に未知の星を見つけたということではありません。「すべての天体は地球を中心に回っている」という天動説に矛盾する、とんでもない事実を見つけたのでした。4つの衛星は後にイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストと名付けられますが、慣習的に今日でもまとめてガリレオ衛星と呼ばれています。
 この本『星界の報告』は、人類で初めて望遠鏡を使って宇宙を観察したガリレオ・ガリレイの手記です。月の表面にも山や谷があること、天の川が無数の星の集まりであること、そして木星に衛星があること。文庫本でわずか70ページほどの短い文章の中に、数々の発見と彼自身の驚き、そして冷静な考察が詰め込まれています。
 印象的なのが「地球照」という現象についての考察です。三日月のような細い月をよく見ると、欠けて見えないはずの部分も薄く円く見えることがあるでしょう。あれは太陽の光が地球に一度反射してから月を微かに照らしているからなのですが、ガリレオはその仕組みを正確に考察しているのです。ここを読んだときは感動で震えました。
 そして思ったのです。考えてみれば、今から400年も昔にイタリアの天文学者が書いた本が、日本語に訳されて駅前の本屋さんに並び、たった500円で買えるというのは凄いことだと。これこそが文明であり、文化というものなのですよ。
 書店の数はその国の文化の高さを示すバロメーターだ、というのは本当だと思います。日本は恵まれています。二千年以上むかしのギリシャの哲学者の本も、国の宝というべき古典の数々も、まるでオヤツを買うような気軽さで買えます。みんなで本を読みましょう。とくに若い皆さんには、たくさん本を読んでほしいです。それは必ず将来の、僕たちの世界の豊かさと幸せの糧になるはずです。

 
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