君も星だよ ――合唱曲《COSMOS》に込めたメッセージ

ミマス
1971年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。音楽ユニット『アクアマリン』のキーボード、ギター、作詞・作曲担当。代表曲『COSMOS』『地球星歌』などは富澤裕氏により合唱曲に編曲され、全国の学校や合唱団で歌われている。小学生の頃から天文や宇宙に親しみ、旅好きで多くの国を旅した経験もあるため、星や宇宙、自然や旅などをテーマにした作品が多い。大学・大学院の専攻は自然地理学。音楽は高校生のときに独学で始める。近年はアクアマリンでのライブ活動のほか、小・中学校に招かれての授業や講演も多い。
公式サイトは、http://aqumari.com/

ミマス

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君も星だよ――合唱曲《COSMOS》にこめたメッセージ
※連載の内容はごく一部です。
   
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第7回
歌を作ろう!〜宇宙でいちばんやさしい作詞講座〜

1.歌はみんなのもの

 何かを自分で作ってみたい。何かを表現してみたい。きっと多くの人がそんな気持ちを抱えています。
 表現のやり方にはいろいろありますが、ここでは、「作詞」ということに挑戦してみましょう。

 「表現」というと、たいへん難しくて高級なことのように聞こえてしまいますね。でも大丈夫。じつは君も無意識のうちに、いつもやっていることなのですよ。
 たとえば君が、北海道かオーストラリアの大平原に旅行をしたとします。雄大な風景に感激したとしましょう。
 帰ってきて、きっと君はその感動を家族や友だちに伝えたいと思います。さて、どうしたらいいでしょう。

 ひとつには、「言葉で説明する」ということが考えられます。
 それから、「絵を描いて見せる」ということもできます。
 「撮ってきた写真を見せる」でもいいですね。
 「音楽をつくってきかせる」というのも、じつはそういったことの一つなのです。

 絵を描いたり、写真を撮ったり、文章を書いたりすることは、上手か下手かを別にすれば、誰にでもできます。
 歌を作ることも、うまいかヘタかを別にすれば、とりあえず誰にでもできると思います。

 ところがよくこんな声を耳にします。
 「私は楽譜が読めないし、楽器も弾けない。語彙も少ない。歌を作るなんて絶対無理ムリ!」

 僕は歌を作ることを仕事にさせていただいています。でも、ちゃんと音楽を習ったことがないので、今でも楽譜の読み書きが苦手です。それでは歌を作ったとき、どうやってボーカルのSachikoに渡しているのでしょうか。

 それは、「自分で歌って聴いてもらう」という方法。これがいちばん手軽で、しかも確実です。
 僕にはミュージシャンの友人知人がおおぜいいます。なかにはもちろん楽譜の読み書きが堪能な人もいますが、そうではない人も多いのですよ。そんな人たちも感動的な音楽をたくさん作っています。

 楽譜ができるずっと前から、人間は歌っていました。だから、楽譜が音楽の本質であるはずがありません。
 まあ、そういった堅い話はぬきにして、むずかしく考えずにやってみることにしましょう。

2.作詞のコツ 〜とにかくどんどん削ろう!〜

 作詞を始めてまもない頃は、詞というより作文のようなものができてしまいます。つい詳しく語りすぎて、説明文のようになってしまうのです。これは多くの人が陥る、作詞の道の「最初の落とし穴」といっていいでしょう。
 作文調のものを詞らしくするには、「言わなくても伝わる言葉をどんどん削る」ということに尽きます。
 さっそく例をあげて見てみましょう。ぜひ声に出して読んでみてください。

   ●「金星」(まるで作文)

     遠くに山のシルエットが見える 絹のような雲が赤く染まっている
     僕は はなやかな大通りを走り抜けて 街の外れに来た
     西から吹いてくる風が音を立てながら 土の匂いを運んでいる
     いつもと変わらない風景が こんなに悲しく見えてしまう

     赤く染まってゆく空の中で 金星がひとりだけ強く光っている
     金星はゆらめかないで なにもいわないで 聞こえるのは風の音だけ

   ●「金星」(詞らしくなる)

     遠い山のシルエット 赤く染まる絹雲
     はなやかな通りを抜けて 街外れに来る
     音を立てる西風が 運ぶ土の匂い
     いつもと変わらぬ風景が こんな悲しくなる

     赤くなる空の中で ひとりだけ強く光る
     ゆらめかず なにもいわず 風の音だけがする

さて、どんな言葉が削れるのでしょうか。

1.文を名詞句にする(体言止め)
  「星明りがきらめいている」→「きらめく星明り」
  「雲が流れる」→「流れる雲」
  「月の光が降りそそいでいる」→「降りそそぐ月の光」
  「◯◯が××する」→「××する◯◯」

2.助詞を削る
  「街の外れ」→「街外れ」
  「私はあなたの言葉を待ってたのに」→「私 あなたの言葉 待ってたのに」

3.主語や目的語を削る
  「僕は君が好きだ」→「好きだ」
  「あなたは遠くへ行ってしまうの?」→「行ってしまうの?」

もちろん、ただ闇雲に削ればいいということではなく、臨機応変にやってくださいね。

3.良い詞を書くために

 最後に少し踏み込んで、「良い詞を書くためにはどうしたらいいか」ということを考えてみましょう。

 まず一つ目は、自分の言葉で書くということです。作詞というと、ふだん使わないような難しい言葉を、どこかから持ってきて並べようとがんばってしまう人が多いように見えます。
 確かに、文学的な難しい単語、エキゾチックな外国語を使うことで、楽曲全体の世界観を演出するという大きな効果が得られます。ただ、このワザをうまく決めるには、すこし経験が必要です。これから初めて歌を作ろうという人がやると、刺激の強い言葉を操りきれず、収拾がつかなくなることも多いのです。
 君がふだん話している言葉を使ったほうが説得力が増します。それに、意外に思われるかもしれませんが、誰でも知っているやさしい言葉、ありふれた言葉こそ、じつは大きなパワーを持っているのですよ。

 二つ目は、「言葉の定義を自分でする」ということ。これはちょっと難しいので解説しましょう。
 多くの人が、「愛」「幸せ」「夢」「自由」「豊かさ」といった、きわめて重要な言葉を、その意味を深く考えることなく軽く使っています。しかしこれらの言葉は、おそらくこれから君が作る歌の中でもっとも重要なキーワードとなるものでしょう。できるだけ丁重に扱うことで、歌の深みが増してくるはずです。

 そのための良い方法があります。こうした抽象語ひとつひとつについて、その意味を君が自分で定義するのです。愛とは何でしょうか? 幸せとは何でしょうか? 作詞でその言葉を使うなら、その前に自分の言葉で定義してみましょう。
 例えばこんな感じです。僕は「夢」とは「その人をいろいろな世界へ連れて行ってくれる乗り物だ」と定義しています。心に芽生えた夢や憧れを大切にすれば、いつかその夢が自分をいろいろな所へ連れて行ってくれて、素晴らしい体験や出会いをもたらしてくれる。そういうことを人生で学んだからです。

 また「自由とは何か」と聞かれたら、きっと多くの人が「何にも従わないこと」だと答えるでしょう。でも僕の定義はこうです。「自由とは何に従うかを選べることであり、究極の自由とは自分の信念と良心に従うことができることだ」。
 これは人の数だけ正解があります。そして、この部分こそが作者や作品の「個性」というものになってきます。

 作詞における個性とは、いかに他の人が使わないような言葉を使うか、ということではありません。誰もが普通に使っている言葉を、君はどう使うのかということです。その言葉に、どういう意味を与えるのかということです。だから繰り返し言いますが、無理をして耳なれない言葉を使う必要はありませんし、一つの言葉を大切に扱うということが何よりも重要なのです。(そうしてだんだん慣れてきたら、時には冒険的な表現をいろいろ試してみるのも楽しいですよ。そこからユニークな良い作品ができることもあります。)

 さてここまで、「歌を作ろう!〜宇宙でいちばんやさしい作詞講座〜」というテーマで書いてきました。
 胸の中にある想いをカタチにするというのは本当に素晴らしいことです。それによって、自分自身がハッキリ見えたり、自分の存在を確かなものとして実感できるようになったりします。「ちょっとやってみようかな……」。そんな気持ちになってくれたら、本当に嬉しいです。

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