君も星だよ ――合唱曲《COSMOS》に込めたメッセージ

ミマス
1971年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。音楽ユニット『アクアマリン』のキーボード、ギター、作詞・作曲担当。代表曲『COSMOS』『地球星歌』などは富澤裕氏により合唱曲に編曲され、全国の学校や合唱団で歌われている。小学生の頃から天文や宇宙に親しみ、旅好きで多くの国を旅した経験もあるため、星や宇宙、自然や旅などをテーマにした作品が多い。大学・大学院の専攻は自然地理学。音楽は高校生のときに独学で始める。近年はアクアマリンでのライブ活動のほか、小・中学校に招かれての授業や講演も多い。
公式サイトは、http://aqumari.com/

ミマス

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君も星だよ――合唱曲《COSMOS》にこめたメッセージ
※連載の内容はごく一部です。
   
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第6回
独学で音楽を学び、仕事にする

1.音楽との出会い

 僕は中学生の頃、音楽が苦手でした。音楽の授業で一人ずつ歌わされたりするでしょう。あれが本当に苦痛で、イヤでした。
 そんな人間が音楽を仕事にするようになるのですから、人生というのは不思議なものです。

 いま小・中学校で音楽を教えている先生がたには、ここで声を大にしてお願いしたいことがあります。  受け持っているクラスの中には、音楽嫌いの子もきっといるでしょう。でも、その子が将来、何かのきっかけで音楽に目覚め、その道に進むかもしれません。ぜひ見捨てないでほしいです。

 僕は今でも楽譜の読み書きが苦手です。でも、義務教育で習った程度のことならばできるのです。それがどれだけ役に立ったか。最低限の、基本的なことだけでも知識があれば、後になって自分で勉強したいと思ったとき、買ってきた本に書いてあることが理解できるのです。これは極めて重要なことだと思います。

 僕は小学生のころ、地元の博物館のプラネタリウムや天体観望会に通うようになったのをきっかけに天文に熱中するようになったのですが、じつは音楽と出会ったのも博物館だったのです。

 プラネタリウムに行ったことはありますか? 星空とともに、美しい音楽が流れるでしょう。
 星空をバックに流れる、シンセサイザーの幻想的な音楽。
 「なんてきれいな音楽なんだろう!」
 雷に打たれたように、という言い方がありますが、まさにそんな感じで一瞬にして心を奪われたのです。

 具体的なアーティスト名を書くと、ドイツの「CUSCO(クスコ)」、日本の「姫神せんせいしょん」、ギリシャの「YANNI(ヤニー)」など。シンセサイザー音楽の歴史に燦然と輝く、偉大なバンドや音楽家です。中学生時代は、それらの音楽を夢中になって聴きました。

 高校1年生のとき、自分でも何かやってみたくなり、カシオトーンという安いキーボードを買いました。ボタンひとつでいろいろな音色やリズムが出るやつです。今でも家電量販店に行くと、数万円くらいでいろいろなのがありますよね。

 全く弾けないのに楽器を買った。自分でも不思議です。でも、重厚なストリングの音色で和音をフワーっと鳴らせば大草原が広がるようでしたし、キラキラしたベルの音色を弾けば星空が見えました。
 気がついたら朝になり、学校を休んで母に怒られたことも。そして夢中でやっているうちに、ついに曲みたいなものができてきました。恐ろしいものです。安物キーボード、偉大なり!です。

 
高校1年生のとき買った『カシオトーン』と、小学6年生のときにお年玉で買った天体望遠鏡。 僕の人生の道を開いてくれた品々ですが、子どもが生まれる際の大掃除で処分してしまいました。 (最後にこうして写真を撮ったのはやはり思い入れがあったからでしょう)

2.自分を本当に表現できる“言語”を見つけよう

 「好きなことを仕事にできたらいいな」

 多くの人がそんな憧れを抱きます。僕もその一人でした。
 学生の頃から、僕にとって音楽は特別なものになっていました。自分の想いを表明し、心の中にある風景を描くことができる、大切な表現手段になっていたのです。うまく言葉で説明できないことも、歌や音楽を作れば表現できるような気がしていました。

 芸術とは何故あるのでしょうか。音楽や絵画、彫刻にダンスに演劇、写真や工芸に料理もそうです。あらゆるアートが存在する理由のひとつは、僕が思うに、多くの人々が絶対的な信頼を寄せている「言葉」というものが、想像以上に不完全なものだからではないでしょうか。

 僕たち人間は日頃から、意外と言いたいことを言えていません。言葉で説明するというコミュニケーションの方法には限界があるからです。「うまく言葉にできないもどかしさ」「ちゃんと言ったはずなのに誤解された悲しさ」は、誰でも経験のあることでしょう。
 歌や音楽を作ることで、ほんとうに言いたいことを言える。この幸福感は、それこそ「言葉では説明できない」ものです。スポーツ選手がよく「プレーを通して自分自身を表現する」と言いますね。あれもきっと似た境地なのだと思います。もし君がそんなものと巡りあうことができたなら、一生大切にしましょうね。

 じつは、僕はたった一年だけ公務員をやったことがあります。大学院を修了する25歳のとき、地元の市役所の採用試験に受かったのです。市役所の窓口で、まじめに働いていたのですよ。
 しかし音楽を仕事にしたいという憧れは消えませんでした。社会人になって半年後の11月、有給休暇をもらって沖縄県の波照間島に旅しました。そして見てしまったのですよ。サトウキビ畑の上に広がる満天の星空を。雄大な天の川が、問いかけているような気がしました。「正直に言いなさい、君は本当は、どうしたいんだ?」
 僕は答えを知っていました。いま思えば良いきっかけでした。旅から帰ってすぐ、辞表を書いたのです。

 辞めてどうするのか、まったくアテはありませんでした。しかしそんなタイミングで僕はSachikoさんというボーカリストに出会うのですから、人生というのは本当に不思議です。

 Sachikoと出会ったのは、ちょうどそのころ開催された地元のアマチュアバンドコンテスト会場。お互いに助っ人として出場していました。僕は、自作曲で出場する知人に頼まれてキーボードを弾きました。彼女は、親戚の叔父さんと叔母さんが作った歌を、助っ人ボーカリストとして歌っていたのです。

 ステージで歌う彼女を、舞台のソデから見ました。キレイな声だなあ、歌うまいなあ……と思いました。
 「あのう、僕も歌を作っているんですけど、歌ってくれませんか」と声をかけたのです。
 彼女は今でも流れに身を任せるタイプの人。そのときも「どうせヒマだし、おもしろそうだな」と軽い気持ちでOKしたのだそうです。

3.「好きなこと」を仕事にしたいという君へ

 「将来、好きなことを仕事にするにはどうしたらいいか」
 中学校や高校などで講演や演奏をするさい、そういうテーマで話してほしいと校長先生からリクエストされることがあります。

 しかしながら、僕が今こういうお仕事をさせていただいているのは、Sachikoさんとの出会いをはじめ、ひとえに「ラッキーだったから」としか言えません。自分のケースを話したところで、他の方の参考になるとは、あまり思えないのですね。ただ、いくつか思うところはありますので、少し書いてみることにしましょう。

 まずひとつ目は、「得意なことをいくつか結びつけたほうがいい」ということ。

 僕はちゃんと分かっているつもりです。自分よりも優れたミュージシャンは日本だけでも何百万人もいるし、自分より星や天文に詳しい人も日本に何百万人もいます。ふつうに考えたら、そのどちらの道へ進んでも、とうていプロにはなれないでしょう。

 ところが僕たちアクアマリンには、「星や宇宙が大好きで、そういう歌を作って演奏してます」というスタイルが1998年の結成当初からありました。これは、いろいろなところで珍しがってもらえました。プラネタリウムでコンサートをするときには、星座解説も自分でやります。すると、こんなことできる人は他にあまりいないね、なんて言ってもらえるのです。

 つまり「組み合わせ」なのですね。ひとつの能力だけでプロになれるのは、特別に高度な才能に恵まれた限られた人だけ。でも、いくつかの能力を組み合わせていけば、ハードルは少し下がるかもしれません。もし君に、得意なことが複数あるのなら、その全てを磨いて何ができるか考えてみましょう。誰もやったことのない、新しい職業のパイオニアに、君がなるのかもしれませんよ。

 そしてもうひとつ感じるのは、これからの時代は「個人的な経験」というものが高い価値をもってくるだろうということです。
 いうまでもなく、今はインターネットの時代。子どもからお年寄りまで、万人がインターネットで簡単に情報収集できます。しかし、そうして得られる情報は全て「誰でも得ることができる」ものなのですね。
 みんなが知っていることを知っている。みんなが持っているものを持っている。それが特別な価値にも魅力にもならないことは、容易に想像がつくでしょう。でも反対に、この世の中で君しか経験していないこと、君しか知らないことは、大きな価値になります。

 僕は地元のラジオで毎週、星空案内番組のパーソナリティをやらせていただいています。そこで、オリオン座にはこんな星があります、こんな神話がありますと話したところで、それはちょっと知識があれば誰にでもできること。他の人がやっても同じです。

 「アメリカの砂漠を旅したとき、しし座が地平線から昇ってくるのを見ました。巨大な岩山からライオンの星座が飛び出してくる光景は本当にカッコ良かったです! 凍えるほど寒かったけど、時間を忘れて見とれてしまいました。」

 そんな話こそ、意外と喜んでいただけて、反響が多いのです。なぜか。それが、実際に体験した人しかできない話だからです。「個人的な経験」は、これからの時代、どんどん価値を増してくるような気がしています。君も、もし好きなことがあるなら、それを突き詰めてゆくなかで様々な経験をするでしょう。そのことが、いつか仕事の面でも大いに役立つ日がきっと来ると思いますよ。

 
「星空」と「音楽」という、大好きなものに関わる仕事をさせていただいているのは本当に幸せなことだと思います。
この写真は毎年8月下旬に新潟県胎内市で行なわれる「胎内星まつり」の会場での1コマ。天文台のエントランスをステージにして、星空の下でコンサートを行なっています。
今年2016年は8月27日(土)に行なわれ、僕たちアクアマリンも出演させていただく予定になっています。ぜひお越しください。
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